彼からの応募メールの内容を見た私は、一筋の希望を見出す。面倒な事態を引き起こし、「プログラマー」や「システムエンジニア」と呼ばれる人達に対する不信感を抱き始めていた。
◆素人にだって「本物」はわかるという感覚
私はシステムに関して素人だし、何がわかるわけではない。そんな私でも「この人は今までの人とは何かが違う。本物のにおいがする」と本能が反応。大企業でのSE経験が13年。私の想像を超える「これまで構築してきた大規模システム」の数々。これはヤバい!こんな零細企業に応募してくる今までの輩とは、何か一線を画している気がする・・・。震えました。
◆喉から手が出るとはこのことか?!
この人、もしかしたら応募先、間違えているかもしれない。この人の希望するサラリーを払うだけの体力はないから、採用はきっと無理だ。でも、これも何かの縁だ。とにかく相談に乗ってもらおう。彼からのメールは、私には芥川龍之介の「蜘蛛の糸」のようにも見え、すがる気持ちで、長くて超暑苦しい必死で本気のメール。夜中の1時4分送信完了。そんな夜中に本来ビジネスではやってはいけないことを、つい。
面接で会うことになったら、この暑さと必死さは伝わることになる。それなら、メールで伝えても結果は同じこと。夜中でも返信メールを送りたい衝動が抑えられなかったんです。
◆なんと、彼は本気だった
翌日。長い一日を過ごすことになります。夜中の1時4分にメールを送信するという非常識な行動に出てしまった。今までにない大物をみすみす逃してしまったのかもしれない。あの日、何回受信メールのチェックをしたことでしょう。諦めかけたその時、夜になって彼からの返信メールが届きます。そこに書かれていた言葉。「様々な事情は理解致しました。どこまでお役に立てるのかはわかりませんが、こんな私でもよろしければ、一度面接して頂くことは可能でしょうか?」
そして面接当日。今抱える最大の課題の相談を含み、8時間に及ぶ面接。そしてまたもや彼の口から飛び出した言葉。「やってみないとわからないですが、今見た限りでは、普通に対応できそうです」「持ち帰って、趣味的にチャレンジしてみます」と言うではないですか。
◆目の前で起こった奇跡
えっ!?出来るはずのメイン担当者が1人音信不通となり、助っ人も逃げ腰、悶々としてもう2ヶ月が経過しているのは一体なんなの?!そして1週間後。彼から「できたみたいです」との連絡が。会社に勤務しながら、誰も出来なかったことを趣味的に解決、なんてことがありうるのか?彼に「見せて」とお願いし、翌日来社。本当にできてました。どうしてもできなかった「あの機能」。見事に出来上がっていたのです。
◆本物のシステムエンジニアを知る事になる
しかも彼は続けるのです。
「これは完成ではないんですよ。やりたいことは出来てるかもしれない。でもサイト連携のサービスとして提供するのであれば、こんなことやあんなこと(ここでは詳細省きます)を装備してはじめて確立することになります」。そんなことまで「趣味的な対応」で考えられる人が世の中に存在することすら知らなかった。目から鱗。そもそも、これまで自分で何かを考え動く人にあったこともなかった。モノづくりの人は、モノだけ作ってたらいい、と考える人があまりに多かった。
結局、彼のご厚意に甘え、弊社に来ていただくこととなりました。